夏の即身仏/伊藤
伊藤鴎です。
ミミズの話します。
私、最近気づいたんですよ…
ミミズ、かっこいい…
ミミズは、
身体に散在する微小な視細胞によって、僅かな光の気配を感知しながら、生きているそうです。ちなみに皮膚呼吸。(Wikipediaより)
視覚が殆どなければ、聴覚もない。
嗅覚もなければ、味覚もない。
触覚もあるのか、ないのか微妙なところ。
要するに、彼ら、
なんか…なんとなくだけど…こうな気がする…という勘だけで生きてるんですよ…
やばい…
や、わかるよ。
いるじゃん、他にもそういう生き物。ミジンコとかアメーバとか。
でも、ミミズ、わりとデカいじゃん…
そのボディでなんとなく勘で生きようとするの、だいぶ攻めてるよ…
『我、信ずる限り、光、我を導かん-。』
(by mimizu)
これほどまでに、達観した、詩人のような生き物が未だかつていましたか…
ミミズ…やばい…
しかも、ミミズの卵の産み方がもうとにかく謎すぎる。なんかミミズって絆創膏みたいのついてるじゃないですか。あれ環帯っていうらしいんですけど、あそこが一応生殖器官だそうで。
卵を産むときには、その絆創膏みたいのをこう、頭の方に徐々に首輪を脱ぐみたいにするらしいんです。
え、でも、どういうこと…アンパンマンの顔的なことなの…よくわからない…謎は深まるばかり…
十字架背負いすぎだよ、ミミズ。
おまけに雌雄同体なところとか、本当、ファンの期待を裏切りません。ジェンダー的にも興味深いですね。
…自給自足が過ぎるよ。
君はいいのか、それで…
夏によく、アスファルトのうえで死んでるミミズいるじゃないですか。
君、馬鹿なの?死ぬよ?大人しく土のなかにいなさいよ。って思うけど、ミミズは意識が高いので、このへんの土はもう耕し尽くした。
だから、別の土地を耕しにいかねばならぬ、とか言い出して、別の土に移動している間に夜が明けて、日が照ってきて、あ、やべ、なんか身体ジュージューいってる…あ、死ぬわ、どんまい…的なノリでアスファルトの上で死んでるらしいんですよ。
禅を極めすぎでは…
そもそも土を耕して君になんの得があるんだミミズ。土耕すのがマイブームってだいぶやばいよ、ミミズ。それ絶対自己紹介で言わない方がいいやつだよ…
まあ、夏に路上で死んでる原因はそれだけではなく、ミミズが雨水などで息苦しくなって、地上に這い出てしまうのが理由ということも多いそうなんですが。
そんなこんなで、ミミズは地上で生き絶えているそうなんです。
そして、やがては人間に踏まれて、焦げて、別の姿で土に還っていく。
でも、私もちょっとだけ、気持ちわかるかもしれません…
なんていうか、日頃生きていて、自分がいま何処にいて、何してるのかもわからなくなってしまって、ただ漠然と、でも確実に、喉元が苦しくなってしまっていることあるじゃないですか。騙し騙し言い聞かせながら、自分のなかに溜め込んでいるものが、自分の首を締めてしまうこと。ああ、息苦しいなって思うけれど、周りはジメジメした暗闇で、でも今の自分はここにいることしか出来なくて、不甲斐ないなって。それで微かに漏れてくる光の気配を信じて、一縷の希望を胸に、縋り付くように這い出ると、自分のなかにかろうじて残っていた潤いが、これだけは汚してはいけないと大切にしまいこんでいた良心が、たちまち蒸発して、焦がされて、踏みにじられてしまうようなこと。
そう、あなたも私もミミズなんですよ…。
現代という土壌を生きる哀しいミミズ…。
干からびたくなければ、予約しましょう。
あなたの心に潤いをもたらす演劇です。
【ご予約】
http://ticket.corich.jp/apply/89971/006/