『アルプスとリビング』

早稲田大学演劇倶楽部第32期新人企画

夏の即身仏/伊藤

 

伊藤鴎です。

 


ミミズの話します。

 

私、最近気づいたんですよ…
ミミズ、かっこいい…

 

ミミズは、

 

身体に散在する微小な視細胞によって、僅かな光の気配を感知しながら、生きているそうです。ちなみに皮膚呼吸。(Wikipediaより)

 

視覚が殆どなければ、聴覚もない。
嗅覚もなければ、味覚もない。
触覚もあるのか、ないのか微妙なところ。


要するに、彼ら、

 

なんか…なんとなくだけど…こうな気がする…という勘だけで生きてるんですよ…


やばい…

 

や、わかるよ。
いるじゃん、他にもそういう生き物。ミジンコとかアメーバとか。

でも、ミミズ、わりとデカいじゃん…

そのボディでなんとなく勘で生きようとするの、だいぶ攻めてるよ…

 

『我、信ずる限り、光、我を導かん-。』

(by mimizu)

 

これほどまでに、達観した、詩人のような生き物が未だかつていましたか…

 

ミミズ…やばい…


しかも、ミミズの卵の産み方がもうとにかく謎すぎる。なんかミミズって絆創膏みたいのついてるじゃないですか。あれ環帯っていうらしいんですけど、あそこが一応生殖器官だそうで。

 

卵を産むときには、その絆創膏みたいのをこう、頭の方に徐々に首輪を脱ぐみたいにするらしいんです。

 

え、でも、どういうこと…アンパンマンの顔的なことなの…よくわからない…謎は深まるばかり…

 

十字架背負いすぎだよ、ミミズ。

 

おまけに雌雄同体なところとか、本当、ファンの期待を裏切りません。ジェンダー的にも興味深いですね。

 

…自給自足が過ぎるよ。

君はいいのか、それで…

 

夏によく、アスファルトのうえで死んでるミミズいるじゃないですか。
君、馬鹿なの?死ぬよ?大人しく土のなかにいなさいよ。って思うけど、ミミズは意識が高いので、このへんの土はもう耕し尽くした。
だから、別の土地を耕しにいかねばならぬ、とか言い出して、別の土に移動している間に夜が明けて、日が照ってきて、あ、やべ、なんか身体ジュージューいってる…あ、死ぬわ、どんまい…的なノリでアスファルトの上で死んでるらしいんですよ。

 

 

禅を極めすぎでは…

 

そもそも土を耕して君になんの得があるんだミミズ。土耕すのがマイブームってだいぶやばいよ、ミミズ。それ絶対自己紹介で言わない方がいいやつだよ…

 

まあ、夏に路上で死んでる原因はそれだけではなく、ミミズが雨水などで息苦しくなって、地上に這い出てしまうのが理由ということも多いそうなんですが。

 

そんなこんなで、ミミズは地上で生き絶えているそうなんです。

 

そして、やがては人間に踏まれて、焦げて、別の姿で土に還っていく。

 

でも、私もちょっとだけ、気持ちわかるかもしれません…

 

なんていうか、日頃生きていて、自分がいま何処にいて、何してるのかもわからなくなってしまって、ただ漠然と、でも確実に、喉元が苦しくなってしまっていることあるじゃないですか。騙し騙し言い聞かせながら、自分のなかに溜め込んでいるものが、自分の首を締めてしまうこと。ああ、息苦しいなって思うけれど、周りはジメジメした暗闇で、でも今の自分はここにいることしか出来なくて、不甲斐ないなって。それで微かに漏れてくる光の気配を信じて、一縷の希望を胸に、縋り付くように這い出ると、自分のなかにかろうじて残っていた潤いが、これだけは汚してはいけないと大切にしまいこんでいた良心が、たちまち蒸発して、焦がされて、踏みにじられてしまうようなこと。

 

そう、あなたも私もミミズなんですよ…。

現代という土壌を生きる哀しいミミズ…。

 

干からびたくなければ、予約しましょう。

あなたの心に潤いをもたらす演劇です。

 

【ご予約】

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